シーラカンス食堂 / MUJUNは日本とオランダの二拠点で、自分たちとご縁のある工芸品に新たな価値観を生み出し、現代のライフスタイルにあったものづくりと販売をしています。先人たちのものづくりは、私たちの日々の生活の中に関連性があり、新しいインスピレーションを与えてくれます。職人技、工芸は日本の文化とアイデンティティの重要な要素であるという信念から日々活動を続けています。
デザインスタジオであるシーラカンス食堂の仕事は、商品やグラフィック、ウェブから空間や地域まで、あらゆるものをデザインすることだ。
弊社の抱える案件は具体的なデザインに至るまで長い時間が必要なケースが多い。地域や会社、ブランドや商品等を確立するためには、全体的なデザインが必要とされる。たとえ特定のデザインの依頼があっても、本当の問題点を見つけ、大きなビジョンを描けてからでなければできない。
最も重要なのは、問題の根っこを見つけることと、それに対する解決策のアイデアだ。大きなビジョンを持ってこそ、デザインする意味があり、そのビジョンに近づくための手段にデザインという行為が必要なのだ。
また、我々の業務としてはマーケティングやブランディングを意識することで貢献できることがあるが、クライアントには後継者問題や業界の高齢化、若者不足などが問題の根本ということがある。この場合、弊社も主体的に動かないと役割を果たせないという自覚がある。我々が関わる意味として、現在のところ自分たちが若者の集団であるということを強く感じることがよくある。
誰もが共有しているより良い未来を作るというビジョンに対し、地域の財産を活かすことが解決策だと断言する。国際化が進む中で生き残るには、地域産業や文化、伝統を生かし、どこにもまね出来ない独自性を育てることと、それを伝えるデザインが必要だ。
伝統産業は売るだけでなく、観光資源としての可能性も秘めている。世界目線になるとその希少価値は高く、地域財産として誇りを持つべき素晴らしいものだ。
これらの財産の価値に気付いている人はまだまだ少ない。放っておくと消えてしまいそうなものがたくさんある。みんなで真剣に考え、この価値を次の時代の担い手である若い世代や子どもたちに伝えることに力を入れなければならない。
シーラカンス食堂の名前について:
シーラカンスとは古代から進化せずに生き続けている深海魚です。日本では幼少期に教科書で学ぶためとても知名度が高い魚です。シーラカンス(Coelacanth)の名前は、古代ギリシャ語で構成された学術用語で、Coelacanth= 中空の脊髄という意味です。脊髄の中が空洞という大きな特徴を持っており、海底と海面を脊髄の容積調整で行き来できるという大変珍しい構造になっています。省エネで海面まで浮上し、プランクトンを食べ、安全な海底へ降りていける。数億年生きてこられた本質がここにあるのです。このことが学術的な視点で命名された理由になります。
つまり、Coelacanthとは目に見えない本質が魚の名前になっているということです。デザインの本来の意味は見た目や色などではなく、本質的なことを捉えそれを表現したり問題解決したりすることですので、この名前に共感したことが由来になります。
食堂とつけたのは、シーラカンスを日本人は食べないという面白さもありますが、我々が田舎に根ざした活動をする上で、奇をてらったようなことがしたいのではなく、本質的にクリエイティブな場を考えた時に食堂が頭に浮かんだからです。小さなお店の台所から多くの料理のバリエーションを生み出し、素材本来の良さを生かした体に良い料理を提供し、さらにとてもリーズナブルな価格。これこそ真のクリエイティブだと思うので、その憧れから食堂としました。また、関西人として、自己紹介で突っ込まれることで相手様に自己紹介のきっかけを作れるという狙いもあります。