元重製作所(石見焼 / すり鉢、おろし器)のイノベーション

[ デザインイノベーション事業/ Design innovation ]
・問題点、課題

元重製作所は大正14年の創業以来、石見焼の水瓶をはじめ、植木鉢やお皿などを製造し、約35年前の三代目社長から、すり鉢を本格的に製造をはじめ全国に流通していきました。しかし4代目の元重慎市(現専務)が会社に入った時、昔と違い家庭からその姿が薄れかかっていたり、親世代が昔購入したものが丈夫なので新しく買う理由がなかったりと、すり鉢の需要はちょうど過渡期を向かえていました。モノづくりには絶対的な自信はあっても今までと同じやり方ではこのまま縮小してしまう。専務はとても危機感を覚えたのでした。

・デザインしたこと

元重製作所の専務が日々試行錯誤する中、社内では孤立化してしまい、外からの情報も少なく、悩んでいました。我々は生産量を減らして利益率を上げるにはどうしたら良いか、どんなことにこだわるべきか、既存の販路とは別の販路を作るにはどうしたら良いかなど、酒の席を借りていろんな実体験を元に自然な形でアドバイスしていきました。そして専務の努力で素晴らしい商品が完成しました。そこからその素晴らしい商品の周辺を取り巻くブランド全体のデザインや海外展開を手伝わせていただくことになります。また既存の販路のお客さんに悪影響のないように専務が頭になる別ブランド「もとしげ」をデザインしました。すり鉢とおろし器をメインに製造している会社と一目でわかり、海外でもそのまま使えるよう英文字を組み合わせた新たにロゴをデザインし、展示会でのブース、パンフレット、webなどをブランドに関わるもの全てを製作させていただきました。現在海外販路開拓と卸を担当する形でお付き合いを継続的にさせていただいています。

・ストーリー

元々は石見焼きの水瓶を製造する会社でしたが上水道の普及により水瓶の需要は減少していきました。植木鉢やお皿など製造していた時期もありましたが他の焼物産地と比べると決定的に勝るものがなく、長く苦しい時代が続きました。三代目社長がこの状況を打破するためにすり鉢に最適だった石見の土を使い、すり鉢を製造を始めました。エンジニアだった経験を生かして、すり鉢専用の生産ラインを自ら設計し低コストで商品と作る環境を築き上げました。全国的にすり鉢が不足していたことも味方したことと、ホームセンターが全国に普及した時期に重なり、もとしげのすり鉢は全国へと広まっていきました。

・変化したこと(結果)

東京の展示会への出展で多くの取引先ができました。また海外でも外国の食文化にあった使用方法が発見でき、海外でも取引が素晴らしい勢いで増えてきています。またブランドの立ち上げ時にはクラウドファンディング(Makuake)を活用し、目標金額の300%を超えるなど、PRとマーケティングの活用を兼ねた時代にあったスタートをきることができました。生産性よりも、道具としての使い勝手を考えきった結果、生産量は減っても利益率を上げることができ、その商品が時代に受け入れられて広がっています。それでも品質と比べてお手頃な価格帯で提供できるもとしげの製造力は素晴らしいです。専務は言います。「この商品を新たなスタンダードにしたい」と。


 
 
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